鉄敷かなしき)” の例文
見ると、そこが卜斎ぼくさい細工小屋さいくごやか、東のすみにぽッと明るいほのおがみえて、トンカン、トンカン、つち鉄敷かなしきのひびきがしている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
外界の刺戟によって発動した自己の感激、意望というものを、一先ず、能う限り公正な謙虚な省察の鉄敷かなしきの上にのせ、容赦なく批判の力で鍛えて見る。
われを省みる (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
見るとこのうちの主人は五十ばかりのお爺さんですが、独身者ひとりものと見えてお神さんも子供も居ず、たった一人で一生懸命鉄槌で鉄敷かなしきをたたいて、テンカンテンカンと蹄鉄を作っています。
豚吉とヒョロ子 (新字新仮名) / 夢野久作三鳥山人(著)
大なる火炉とおおいなる鉄敷かなしきとの周囲
そして、鉄敷かなしきのうえに、それを置くや否、小鎚こづちを把って唇を噛みしめ、一念に鍛ち初めた。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夜半も、ふいごうなり、鉄敷かなしきの響きが洩れ、冬の月へ、て返った。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
テーン! カアーン! 火花を、鉄敷かなしきから走らせていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)