金雀花えにしだ)” の例文
オルガンティノは気味悪そうに、声のした方をかして見た。が、そこには不相変あいかわらず仄暗ほのぐらい薔薇や金雀花えにしだのほかに、人影らしいものも見えなかった。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
身にはぼろをまとい、ベルヴィルの丘で折り取った一枝の金雀花えにしだを手にしていたが、ある古物商の店先に騎馬用の古いピストルが一つあるのに目を止めた。
実際、私たちが今近づいているのは島でも非常に気持のよい処であった。かおりの強い金雀花えにしだや、花の咲いている多くの灌木が、ほとんど草に取って代っていた。
髮に微笑ほゝゑみを含んで清い小川をがはの岸に寄りかかる少女子をとめご金雀花えにしだ、金髮の金雀花えにしだ色白いろじろ金雀花えにしだ清淨しやうじやう金雀花えにしだ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
今から丁度二年前の金雀花えにしだの咲く春であった。
物凄き人喰い花の怪 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
なぜなら、私は自分のいた処にじっとしていられなくて、再び土手へ這い上ったからで、そこから、頭を金雀花えにしだの茂みの後に隠して、私の家の前の街道を見渡そうと思ったのである。
それはまた事によると、祭壇の前に捧げられた、水々みずみずしい薔薇ばら金雀花えにしだが、匂っているせいかも知れなかった。彼はその祭壇のうしろに、じっと頭を垂れたまま、熱心にこう云う祈祷を凝らした。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
金髮きんぱつ金雀花えにしだよ、夢ばかりみてゐる纖弱かよわい木、わたしの悲しい心のよろこび
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
金雀花えにしだなか外套まはし羽織はおつたまま、横向よこむきてゐる。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)