金縁眼鏡きんぶちめがね)” の例文
「お重また怒ったな。——佐野さんはね、この間云った通り金縁眼鏡きんぶちめがねをかけたお凸額でこさんだよ。それで好いじゃないか。何遍聞いたっておんなじ事だ」
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
向うに坐った金縁眼鏡きんぶちめがね隣に坐った禿頭の行商と欠伸あくびの掛け合いで帰って来たら大通りの時計台が六時を打った。
根岸庵を訪う記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
白いきれくびに巻いた女と一緒に歩いている、金縁眼鏡きんぶちめがねの男の姿などが、ちらほら目についた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そんな時には屹度きつと丸髷まるまげ金縁眼鏡きんぶちめがねをかけて、すぽりと面帕ヴエールかづいて、足にはくつ穿いてゐる。
それに天性の見栄坊みえぼうも手伝って、矢張やっぱり某大家のように、仮令たとい襟垢えりあかの附いた物にもせよ、兎に角羽織も着物もつい飛白かすりの銘仙物で、縮緬ちりめん兵児帯へこおびをグルグル巻にし、左程さほど悪くもない眼に金縁眼鏡きんぶちめがねを掛け
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
わざとらしくはずした黒い金縁眼鏡きんぶちめがねの曇りを拭きはじめた。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
自分は電報紙を持ちながら、是非共おさださんを貰いたいという佐野のお凸額でことその金縁眼鏡きんぶちめがねを思い出した。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わざとらしくはづした黒い金縁眼鏡きんぶちめがねくもりをきはじめた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)