金満かねもち)” の例文
旧字:金滿
あれもさ、巡査だから、おれが承知しなかったと思われると、何か身分のいい官員か、金満かねもちでもえらんでいて、月給八円におぞ毛をふるったようだが、そんないやしい了簡りょうけんじゃない。
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いまから大凡おおよそ十三四ねん以前いぜん、このまちの一ばん大通おおどおりに、自分じぶんいえ所有っていたグロモフとう、容貌ようぼう立派りっぱな、金満かねもち官吏かんりがあって、いえにはセルゲイおよびイワンと二人ふたり息子むすこもある。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
散会ぞとは、いはれぬところへ、虚勢を張つて、途から、そつと、逃げて帰ぬ、粋の上ゆく粋あれど。澄は日頃金満かねもちの、細君故の、逃げ足を、知つたか、知つた、遁がすまい、よし来た合点、妙々と。
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
さ、こういう因縁があるんだから、たとい世界の金満かねもちにおれをしてくれるといったって、とてもうこたあかれない。覚悟しろ! 所詮しょせんだめだ。や、こいつ、耳にふたをしているな
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)