遺産いさん)” の例文
ねえ、そうなれば、だんなはきっと、わたしを遺産いさんに分けてもらったのを、お喜びなさるにちがいありません。
ドビュッシーの音楽には伝統的形式や、支配的な均衡シンメトリーは一つもない。彼はあらゆる音楽上の遺産いさん取除とりのけて、全く自由に振舞ふるまわなければ承知しなかったのである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
財産の監理権かんりけんあるいは遺産いさんに関する条文を説いたに対して、この紳士が答えて長文を寄せた。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「おじさんから遺産いさんをもらったくせに、けちな男だなあ」
一万両の遺産いさんを手に入れて、松前屋はふたたび店を開きました。若い美しい女房、それはお君だった事は言うまでもありません。気の毒な事に、その婿むこは八五郎ではなかったようです。
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
まるるときは産婆さんばに手数料を払い、死すときは葬儀屋そうぎや桶代おけだいを払い、死後遺産いさんゆずれば租税そぜいを払う、何ものか払わでまさるべきものかある。ただ自然の美のみはあたいなしに得らるる恩恵おんけいである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)