辺陬へんすう)” の例文
辺陬へんすう熱帯瘴癘しょうれいの蛮地であって、これを画測するにも容易ならざる歳月と費用とを要すべく、加うるに多大の危険と戦わねばならず
令嬢エミーラの日記 (新字新仮名) / 橘外男(著)
芭蕉を中心とした元禄の盛時は、その身辺に才俊を集め得たのみならず、遠く辺陬へんすうの地にまで多くの作家を輩出せしめた。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
九州でも今の地理からすれば辺陬へんすうと称しても好い土地に祖先以来の屋形やかたがある。小高い野づかさが縦に列んでいるのが特異な景観として目につきやすい。
そして浮浪の士と辺陬へんすうの書生に名と富と権力とを与えた。彼等のつくった国家と社会とは百年を保たずして滅びた。徳川氏の治世より短きこと三分の一に過ぎない。
冬日の窓 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
われわれの物ずきに近い足跡を語る前に、まずその地理について説明を加えなければならぬほど、そこは辺陬へんすうに属する場所であり、同時に山の持つ秘密な境地であったかもしれない。
二つの松川 (新字新仮名) / 細井吉造(著)
それにもかかわらずなお今日に至るまで国の辺陬へんすうに住む多くの農民の間に、幽かとは言えない程度に、古い世の慣行の一致を持ち伝えていたということは、新たな学問の興隆のため
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
猿楽は寺坊の間から起ってこれらの将軍と公卿との寵児ちょうじとなり、更に慰楽に飢えた民衆一般の支持をうけ、遠く辺陬へんすうの地にまで其の余光を分った。能面の急激な発達はくして成就せられたのである。
美の日本的源泉 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
「山坂」云々はいかにもそのころの辺陬へんすうの感じがあらわれていて
しかも片や羅馬ローマ古代史、片や海洋学の世界的権威二人の碩学せきがくが、ボカス・デルトーロの辺陬へんすうから世界的な重大発表をするらしいという噂が
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
昨年七月十日亜留然丁アルゼンチンのセミーリア州、アンデスに源を発するコロラド河がバヒア・ブランカ湾に注ぐ辺陬へんすうボカス・デルトーロの村の海岸に
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
北海道の留萌るもい港……正確に言えば、天塩国留萌郡留萌町てしおのくにるもいぐんるもいまちであろうが、もちろんこんな辺陬へんすうの一小港などが諸君の関心をいていようとも思われぬ。
生不動 (新字新仮名) / 橘外男(著)
剣橋ケンブリッジ大学の教授アンドリウス・ケネディ博士が、この辺陬へんすうボカス・デルトーロの村へ招ばれてやって来たというのは、実にこういう経緯いきさつからであった。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)