やッ)” の例文
二三度彼方此方あちこちで小突かれて、蹌踉よろよろとして、あやうかったのをやッ踏耐ふんごたえるや、あとをも見ずに逸散いっさんに宙を飛でうちへ帰った。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
招魂社の裏手の知れにくうちで、車屋に散々こぼされて、やッと尋ね当てて見ると、門構は門構だが、潜門くぐりもんで、国で想像していたような立派な冠木門かぶきもんではなかった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
やッと放免されて、暗黒くらやみを手探りで長四畳へ帰って来ると、下女が薄暗い豆ランプを持って来て、お前さん床をったら忘れずに消すのですよと、朋輩にでも言うように、粗率ぞんざいに言置いて行って了った。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)