身贔屓みびいき)” の例文
妙子さんのがうつったとは決して仰有らない。唯清之介さんが流感に罹った、と全く別口に扱っている。母親は殊に身贔屓みびいきが強く
女婿 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
こればっかりは男にはできねえ。わしゃいったい、どうも身贔屓みびいきをするわけではないが、女の方が男に比べて脳味噌が少し足りねえと思うね。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
………誰にも身贔屓みびいきと云うものはあるから、ばあやの眼には啓坊けいぼんと云うものが純真の青年のように映るのであろうけれども
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それがやっぱり身贔屓みびいきで、自分の娘の悪いことは棚にあげて、ふだん遊びに行くなあちゃんが、家へ帰って何か讒訴ざんそでもしたように思い込んでいるらしいんです。
半七捕物帳:35 半七先生 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
身贔屓みびいきをするんじゃあないけれど、第一腕力に掛けたって女は弱い、従わせられる、みんな亭主の不心得だ。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
賄賂わいろと、請託せいたくと、身贔屓みびいきと、ころび芸者と、山師、運上……これが目下の流行だのう」
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
身贔屓みびいきな助七の言動につれて、二人の若者までも長次郎等を侮っていた。
黒部川を遡る (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
生れつき筋がよいせいなのではあるまいかと、そう云っては身贔屓みびいきになるかも知れないが、幸子には思えたのであった。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
身贔屓みびいきの強い人けに、自分の勢力を拡張した積りだった。要するに寛一君は八方四方の賛同と期待を受けて、○○大学卒業早々伯父さんの店へ入ることになったのである。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
自分の身贔屓みびいきばかりじゃ追っつかないで、遠い先祖の世話まで焼かなけりゃ、暢気のんきな旅もできなさらないんだから、お気の毒なものさ、そこへ行っちゃ失礼だが、わたしなんぞは……
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「いいえ、浅草の絵馬の馬も、草を食べたというじゃありませんか。お京さんの旦那だから、身贔屓みびいきをするんじゃあないけれど、あれだけ有名な方の絵が、このくらいな事が出来なくっちゃ。」
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こう申しては身贔屓みびいきのようであるが、本人は、頭脳、学力、性行、芸能等、いずれも及第点を与えられてよい女性であると、申上げることが出来る。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ま、そない思うのん身贔屓みびいきかも分れへんが、お前のいうのん聞いてみたらもともと綿貫いう奴から起ったことで、ほんまに悪いのんの男一人や。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
あの妹を知らず識らず身贔屓みびいきして実際以上に買いかぶっていたかも知れないが、しかしこの縁談を無理に纏めようとして貴下に対し虚偽を申上げた覚えはないので
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)