踏留ふみとど)” の例文
こうひしひしと寄着よッつかれちゃ、弱いものには我慢が出来ない。ふちに臨んで、がけの上に瞰下みおろして踏留ふみとどまる胆玉きもだまのないものは、いっその思い、真逆まっさかさまに飛込みます。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
地震のため、いまの為事しごとを棄てて帰国せねばならぬとして、陸路を取るにせよ海路を取るにせよ千円はかかるのである。そんならその旅費だけの分をミユンヘンに踏留ふみとどまつて勉強しようか。
イーサル川 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
三吉は燈火あかりも点けずに、薄暗い部屋の内に震えながら坐っていた。何となく可恐おそろしいところへ引摺込ひきずりこまれて行くような、自分の位置を考えた。今のうちに踏留ふみとどまらなければ成らない、と思った。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ようよう車を踏留ふみとどめ、きもつぶせしむかばらたち、燐寸マッチにあたりて二三本折っぺしょり、ますますいら
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)