赫奕かくえき)” の例文
「ひかり」というのは赫奕かくえきたる牡丹の形容で、同じく子規居士に「一輪の牡丹かゞやく病間かな」という句があり
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
鏡のような両側の壁は、たがいにその光を反映し、はねかえし、それがまた天井の内輪へ照りかえって、洞道ポテルン全体が、赫奕かくえきたる光の氾濫の中へ溺没できぼつする。
地底獣国 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
このまま眠りに入って、眠りからめぬに、あの世に行ったら結構だろうと考えながら寝る。あくる日になると太陽は無慈悲にも赫奕かくえきとして窓を照らしている。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
其牡丹赫奕かくえきとして紅燃えんとするものあり、子規子の墨痕た古雅瀟洒たり。
牡丹句録:子規病中記 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
法然の身体からだから赫奕かくえきと光が現われ、坐っている畳二畳に一杯になっている。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
まして此頃は賢女けんじょ才媛さいえん輩出時代で、紫式部やら海老茶式部、清少納言やら金時大納言など、すばらしい女が赫奕かくえきとして、やらん、からん、なん、かん、はべる、すべるで、女性にょしょう尊重仕るべく
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
終はりに語らんとするもの、是れさきに驚絶駭絶の経験と言ひたるものにして、これまで予が神の現前につきて経験せるもののうち、かくばかり新鮮、赫奕かくえき、鋭利、沈痛なるはあらじと思はるゝ程なり。
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
土堤どてを走る弥次馬やじうまは必ずいろいろの旗をかつぐ。担がれて懸命にかいあやつるものは色に担がれるのである。天下、天狗てんぐの鼻より著しきものはない。天狗の鼻は古えより赫奕かくえきとして赤である。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)