さそわ)” の例文
三十年以前の私の心がそろそろ蘇生そせいして来て、父母在世当時の私の生活や静かな日本を思い出し何んとなく哀調にさそわれてしまうのである。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
帰る折私たちは畑越しに見えた長い土塀の家に心をさそわれた。李氏に案内を乞うてその家を訪ねた。名は李致鳳氏。主人はかつて熊本に住まれた事があるという。
全羅紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
最早もうわたしの婚礼も日がない、この一七日ぜんに、わたしついに無常の風にさそわれて果敢はかなくなりました身で御座ございます、斯様かような次第ゆえ、両親の悲歎は申すも中々なかなかの事、ことに母の心は如何いかばかりかと思えば
雪の透く袖 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)