記念しるし)” の例文
欣々女史も鏡花会にはいって、仲間入りの記念しるしにと、帯地おびじとおなじにらせた裂地きれじでネクタイを造られた贈りものがあったのを、幹事の一人が嬉しがって
江木欣々女史 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
今の私の法悦はたとうるものもありません。そうです、お礼に参籠した今宵を記念しるしとして、ただ今からは御告命の二字をいただいて、善信と名乗ることにいたしまする。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
塔婆、石碑の影もない、墓の根に、ただ丘に添って、一樹の記念しるしの松が、霧を含んで立っている。
久しぶりに江戸へ出た記念しるしに、縁もゆかりもない金剛寺の一空和尚の学房へ、いささかまとまったものを献じただけでも、あまり金に困っていないことが、わかるのだ。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
一寸ちよつと、おくださいましよ。……折角せつかくつてまゐつたんですから、ばかり、記念しるしに。……」
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
卑怯ひきょうな、臆病おくびょうな、我儘わがままな、殿様などはなおの事。貴方がこの五重へ上って、この私を認めたことを誰もほんとうにはせぬであろう。清い、爽かな貴方のために、記念しるしの品をあげましょう。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しずかに以前のかぶとを取る)——これを、その記念しるしにお持ちなさいまし。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)