親譲おやゆず)” の例文
旧字:親讓
彼は、親には早く死にわかれ、兄弟もなければ妻子さいしもなく、天涯孤独てんがいこどくの身の上だった。財産だけは、親譲おやゆずりで相当のものが残されていた。
脳の中の麗人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
けだし、父輝国のせいの高さが少年の彼と同じであったのを考えると、背の低いのは親譲おやゆずりだったのであろう。
企業熱の下火になった今日こんにちといえども、日本中にたくさんある会社に、相応の口の一つや二つあるのは、もちろんであるが、親譲おやゆずりの山気やまぎがどこかにひそんでいるものと見えて
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
父親がその無謀むぼうらしい望みを容易に許さなかったのも無理のないことであった。ポルカさえ満足に作れないせがれは、やはり田舎いなかで、親譲おやゆずりの肉屋と旅籠屋を経営していく方が無事らしく見えたのである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
親譲おやゆずりの無鉄砲むてっぽうで小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほどこしかした事がある。なぜそんな無闇むやみをしたと聞く人があるかも知れぬ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)