裁縫おしごと)” の例文
裁縫おしごともよくするし髪も巧者じょうずに結うし、なんでもかでも女の通りよ。だけど男だっていうの、女の通りに育てられた男だっていうの。
お稲ちゃんは、またそんなでいて、しくしく泣き暮らしてでも、おいでだったかと思うと、そうじゃないの……精々せっせ裁縫おしごとをするんですって。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
温習科二年にたった一人の生徒あたしは、それをしおに学問はやめ、裁縫おしごと稽古けいこにやられる運命になった。
とっさんはね、お侍が浪人をしたのですって、——石橋際に居て、寺子屋をして、御新造ごしんさんの方は、裁縫おしごとを教えたんですっさ、才ちゃんなんかの若い時分、お弟子よ。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私はただ母ちゃん母ちゃんてッて母様の肩をつかまえたり、膝にのっかったり、針箱の引出ひきだしを交ぜかえしたり、物さしをまわしてみたり、裁縫おしごと衣服きもの天窓あたまからかぶってみたり
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どうも可訝おかしい、絵が上手になりますように、踊が、浄瑠璃じょうるりが、裁縫おしごとが、だとよくきこえるけれども、小説は、ほかに何とか祈念のしようがありそうに思われる。作者だってそう思う。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
吉野町よしのちょう辺の裁縫おしごとの師匠へくのが、今日は特別、平時いつもと違って、途中の金貸の軒に居る、馴染なじみ鸚鵡おうむの前へも立たず……黙って奥山の活動写真へもれないで、早めに帰って来て、紫の包も解かずに
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)