表附おもてつき)” の例文
と藤色の緒の表附おもてつき駒下駄こまげたを、べにした爪先つまさき引掛ひっかけながら、私が退いた後へ手を掛けて、格子から外をのぞいた、かどを出てからでさそうなものを、やっぱり雨に閉籠とじこもった処を
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
細かい縞の足利織では有りますが、一寸ちょっと気の利いた糸入の単物ひとえものに、紺献上の帯を締め、表附おもてつきのノメリの駒下駄を穿き、手拭を一寸頭の上へ載せ、垣根くねの処から這入って後姿うしろすがたを見て
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
松屋呉服店から二、三軒京橋きょうばしの方へ寄ったところに、表附おもてつき四間間口しけんまぐちの中央に弧形ゆみなりの広い出入口を設け、その周囲にDONJUANという西洋文字を裸体の女が相寄って捧げている漆喰細工しっくいざいく
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)