虚仮こけ)” の例文
「親分、こう言ったわけだ。三輪の親分に虚仮こけ扱いにされても腹は立たねえが、親分の事まで何とか言われちゃ我慢がならねえ。それに——」
総て虚仮こけといって飾る心で称える念仏では往生は出来ない。飾る心がなくして、真の心で申さねばならぬ。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
我が大王の告げたまふところに、世間は虚仮こけだ仏のみれ真なりと。の法を玩味ぐわんみするに、我が大王はまさに天寿国に生れまさむ。しかも彼の国の形は眼に看叵みがたき所なり。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
「知らねえど思って、何んぼでも虚仮こけばいいさ。何処の世界に、黒い鵞鳥だなんて……」
黒い地帯 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
これは仏教の言葉でいえば虚仮こけというのだろうと思います。虚偽と真実であります。
生活と一枚の宗教 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
果してしそうなら、その人生の贅沢の道具に使われている葛岡は勿論のこと、葛岡のヒューマンのために義憤を起したつもりのわたくしまで、このくらい虚仮こけな役割りはございますまい。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
エヘッ 酒を忘れたんで みんな虚仮こけの思案さ
人間失格 (新字新仮名) / 太宰治(著)
虚仮こけ不実のわが身にて
親鸞 (新字新仮名) / 三木清(著)
これは日本橋通三丁目の上総屋かずさやという糸屋の一人娘で唄の文句にあるような綺麗さ。佐野求馬は虚仮こけの一心で、死ぬの生きるのという騒ぎを起したのも無理のないことでした。
虚仮こけの者は往生しないというのはどのように心得たらよろしゅうございますか」
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
態度が思いの外気さくで、流行神に付きものの虚仮こけおどかしなもっともらしさはありません。
「さあ、それは本物ではあるまい。虚仮こけの行者だろう」といった。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お楽は恐る恐るたるの呑口をひねって、地酒といっても自慢のを一本、銅壺どうこほうり込んで、さっそくのかんをすると、盆へ猪口ちょくを添えて、虚仮こけがお神楽かぐらの真似をする恰好で持って出ます。
「こんな手数のかかる謎々が、虚仮こけや狂人の智恵でこしらえられるものか。来いッ八」