むご)” の例文
「神や仏が、そんなむごたらしい事をする道理はないじゃありませんか、ね親分。五人の子供の親達の嘆きは、見ちゃいられませんよ」
「神や佛が、そんなむごたらしい事をする道理は無いぢやありませんか、ね親分。五人の子供の親達の歎きは、見ちや居られませんよ」
「お氣の毒ですね。——ところでこんなむごたらしいことをする人間に心當りはありませんか。——昨夜何にか變つたことでも——」
「お気の毒ですね。——ところでこんなむごたらしいことをする人間に心当りはありませんか。——ゆうべ何か変ったことでも——」
「殺されていたのですよ、——むごたらしく。死骸は五日前に五人の子供たちが見えなくなった、空地の枯草の中に捨ててあったが」
「なア、師匠、父親がこんなことになるのは、ワケのあることだらう。誰がこんなむごたらしいことをしたか、思ひ當ることはないのか」
殺された清六は五十七八、小作りの胡麻鹽髷ごましほまげ、典型的な番頭ですが、死骸のむごたらしさは、物馴れた平次にも顏を反けさせます。
殺された清六は五十七八、小作りの胡麻塩髷ごましおまげ、典型的な番頭ですが、死骸のむごたらしさは、物馴れた平次にも顔をそむけさせます。
「お内儀さん、お力落しでせう。ま、待つて下さい。下手人はこんなむごたらしいことをして、百まで生きられる筈もありません」
「殺されてゐたのですよ、——むごたらしく。死骸は五日前に五人の子供達が見えなくなつた、空地の枯草かれくさの中に捨ててあつたが」
「意地が惡いなア、親分。あの娘はそんな、人殺しをした上、ひさしにブラ下げるなんて、そんなむごたらしいこと、出來る娘ぢやありませんよ」
「親分、憎いぢやありませんか。どんな野郎が、これほどのむごたらしいことをしやがるんでせう。あつしはもう、腹が立つて、腹が立つて」
「親分さん、この敵を取つて下さい。こんなむごたらしい事をして、——家の中の者に違ひありません。つかまへて八つざきにでもしてやつて下さい」
「親分、憎いじゃありませんが、どんな野郎が、これほどのむごたらしいことをしやがるんでしょう。あっしはもう、腹が立って、腹が立って」
「親分さん、このかたきを取って下さい。こんなむごたらしい事をして、——家の中の者に違いありません。捕えて八つ裂きにでもしてやって下さい」
「二人が死んだ後で、誰か伊太郎の懐を抜いたに違えねえ。が、こんなむごたらしい死骸から財布を抜くのは通りすがりの人間でない事は確かだ」
殺すつもりで土藏に仕掛けた唐櫃からびつ、お琴さんが氣分が惡くて、お前の娘のお萬が行つたばかりに、あのむごたらしい死にやうをしたのを忘れはしまい
殺すつもりで土蔵に仕掛けた唐櫃、お琴さんが気分が悪くて、お前の娘のお万が行ったばかりに、あのむごたらしい死にようをしたのを忘れはしまい
大丈夫だ、庵室から一と晩出なかつたといふのは本當だらう、鐵童は下手人ぢやない。第一そんなむごたらしい殺しやうを
大丈夫だ、庵室から一と晩出なかったというのは本当だろう、鉄童は下手人じゃない。第一そんなむごたらしい殺しようを
「御覽の通りです。私は親父とは隨分仲が惡う御座いましたが、それでも殺した相手は放つちや置けません。一體誰が斯んなむごたらしい事を——」
「一番馬鹿を見たのは、番頭の半九郎だな。娘のお萬が岡崎屋の嫁になり損ねた上、こんなにむごたらしく殺されては」
「一番馬鹿を見たのは、番頭の半九郎だな。娘のお万が岡崎屋の嫁になり損ねた上、こんなにむごたらしく殺されては」
「二人が死んだ後で、誰か伊太郎の懷ろを拔いたに違げえねえ。が、こんなむごたらしい死骸から財布を拔くのは通りすがりの人間でない事は確かだ」
七兵衞と言ふ年寄臭い名を持つて居るのに、死んだ主人といふのは、精々二十五六、一寸好い男ですが、死體は二た眼とは見られないむごたらしさです。
「姉さんにあんなむごたらしい死様しにざまをさせたのも、要さんの職を取り上げたのも、みんな、天とう様のせいかねえ」
礫心中 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「何を、——お菊はな、お前のやうな肥桶臭こえをけくさ小博奕打こばくちうちの相手になるぢやない。彈ね飛ばされたのが口惜しくて、こんなむごたらしい事をしやがつたらう」
「ね、親分さん、あんまりむごたらしいぢやありませんか。万一あれが過ちでなかつたら、佛は浮かばれません」
「何を、——お菊はな、お前のような肥桶臭こえおけくさ小博奕打こばくちうちの相手になるじゃない。弾ね飛ばされたのが口惜しくて、こんなむごたらしい事をしやがったろう」
「ね、親分さん、あんまりむごたらしいじゃありませんか。万一あれが過ちでなかったら、仏は浮かばれません」
平次はむしろをあげて、一応死骸を見ましたが、あまりのむごたらしさに、ハッと眼を閉じたのも無理はありません。
安五郎とお竹が逢引あひびきしてゐる僅かの隙にお咲の部屋に忍び込んで、あんなむごたらしいことをし、それから喜三郎の寢卷を土埃つちほこりすゝで汚して置いたんだらう。
平次はむしろをあげて、一應死骸を見ましたが、あまりのむごたらしさに、ハツと眼を閉ぢたのも無理はありません。
畜生ッ、意気地なし、そのくせ、いけ図々しく、こんなむごたらしい絵まで描いて来やがって、ぬけぬけと私に見せるなんて、何んて根性だろう、外道ッ、鬼ッ
芳年写生帖 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
親一人子一人の評判娘が、このむごたらしい最期を遂げては、母親が目を廻すのも無理のないことでしょう。
堅めたら、あんなむごたらしい目に逢はずに濟んだかも知れないのに、自分で自分のきりやうの良いことを知つてゐただけに我儘が過ぎて、本當に不仕合せでした
あまりのむごたらしさに、ハッと息を呑みました。三人の眼玉が飛出さなかったのが不思議なくらいです。
錢形平次が來さへすれば、このむごたらしいことをした下手人が今直ぐにも捕まりさうに思へたのでせう。
東向きの縁側と西向きの格子窓から、秋の光線は一パイに入つて、その氾濫はんらんする明るさの中に、むごたらしい處女をとめの姿が、血潮の海の中に死の凝結をして居るのです。
「何か変なことを申しましたよ、——お君が殺されているんだ、俺と逃げる筈だったが。畜生ッ、誰がこんなむごたらしいことをしやがったんだ——と言ったようで」
あまりのむごたらしさに、ハツと息を呑みました。三人の眼玉が飛出さなかつたのが不思議な位です。
有明の行燈の下で、美しい眼一パイに溢れた苦悶と、怨の視線を浴び乍ら、この娘を殺す人間の冷たさむごたらしさを、平次は腹の底から憎くならずには居られません。
「何にか變なことを申しましたよ、——お君が殺されてゐるんだ、俺と逃げる筈だつたが。畜生ツ、誰がこんなむごたらしいことをしやがつたんだ——と言つたやうで」
「親分、お嬢さんは何にも御存じじゃありません。お願いですから、お嬢さんを縛るなんて、むごたらしいことを言わないで下さい。そうでなくてさえお嬢さんは——」
「お前と言う男は、何んと言う卑怯者だい。私とあの人の仲を疑って、力ずくで叶わないから芋兵に、訴えて召し捕らせ、こんなむごたらしい目に逢わせやがったろう」
芳年写生帖 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
あのなたを振り廻してあれだけのむごたらしい殺しやうをするのは、誰が何んと言つても男の力だ。——兼松は一度縛られたが、本當の下手人にしちや證據があり過ぎる。
むごたらしいことをするぢやないか。殺す相手にことを缺いて、こんなに若くて綺麗なのを——」
むごたらしいことをするじゃないか。殺す相手にことを欠いて、こんなに若くて綺麗なのを——」
「親分、凄いの何のって、あっしもこの年になるが、まだあんなむごたらしいのは見たこともねえ」
「親分、お孃さんは何んにも御存じぢやありません。お願ひですから、お孃さんを縛るなんて、むごたらしいことを言はないで下さい。さうでなくてさへお孃さんは——」