薄暮合うすくれあい)” の例文
きまりが悪うございますわ。……(太郎は米搗き、次郎は夕な、夕な。)……薄暮合うすくれあいには、よけい沢山たんと飛びますの。」
小春の狐 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ただただ、山一つ越せばいわ、ですすき焼石やけいしふみだいに、……薄暮合うすくれあい——猿ヶ馬場はがらんとして、中に、すッくりと一軒家が、何か大牛がわだかまったような形。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
変に、犬の腹から声を揉出もみだすようで、あ、あの婆さんの、時々ニヤリとする歯が犬に似ている。薄暮合うすくれあいに、じっとしている犬の不気味さを、私は始めて知りました。……
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あせって、もがいて、立ったり居たり、みぎわもそちこち、場所を変えてうろついて見込んだが、ふと心づいてみまわせば、早や何がそまるでもなく、緑は緑、青は青で、樹の間は薄暮合うすくれあい
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
別して、例の縁側散歩はめられません。……一日おいて、また薄暮合うすくれあい、おなじ東の縁の真中の柱に、屋根の落葉と鼻を突合つきあわせてしゃがんで、カーン、あの添水そうずを聞き澄んでいたのです。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ようやく石段の中ほどで、ほっと息をして立った処が、薄暮合うすくれあいの山のすごさ。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)