蕭索しょうさく)” の例文
風がないので竹は鳴らなかったけれども、眠ったように見えるそのささの葉のこずえは、季節相応な蕭索しょうさくの感じを津田に与えるに充分であった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
やっと隧道を出たと思う——その時その蕭索しょうさくとした踏切りのさくの向うに、私は頬の赤い三人の男の子が、目白押しに並んで立っているのを見た。
蜜柑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
皀莢小路の大助の別宅から、暑さをち切るかのように蕭索しょうさくと横笛の音が聞えていた。吹いているのは藤尾である。
新潮記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
夜々、秋の気は蕭索しょうさくとして、冷涼な風はとばりをゆすり、秘壇のともしび紅帋金箋こうしきんせんの祭華をもそよそよ吹いた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
絵は蕭索しょうさくとした裸のを、遠近おちこちまばらえがいて、その中にたなごころをうって談笑する二人の男を立たせている。
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)