蒼生そうせい)” の例文
蒼生そうせいのためにその国の行政機関を運転させるには、ただその為政者たるものが誠意誠心で報国の念に燃えているというだけでは充分でないらしく思われる。
「手首」の問題 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
わが毛利家といえども、一天のもと蒼生そうせいの一藩、あなた方の御盟主たる右府様にも、禁門へたいし奉る臣情においては、まさるとも劣るものにはございませぬ。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たしかに太子が推古の御代を深くおもい給い、蒼生そうせいの苦楽をあわれませられ、更には衆生の発菩提心ほつぼだいしんに大悲願をかけさせられる生御魂がここにおわすのである。
美の日本的源泉 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
孔子が嘆じたのは天下蒼生そうせいのためだったが、子路の泣いたのは天下のためではなく孔子一人のためである。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「殺人剣、活人剣、剣に二種の差別けじめがある。このつるぎは、活人剣じゃ! すなわち一人の悪人を斬り蒼生そうせい百万を助くる剣じゃ! 神よイエスよ我が所行を慈悲の眼をもて見守らせ給え!」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
吾輩はただでさえこのくらいな器量だから、これより色男になる必要はないようなものの、万一病気にかかって一歳なんげつ夭折ようせつするような事があっては天下の蒼生そうせいに対して申し訳がない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
乃公だいこういでずんば、蒼生そうせいをいかんせむ、さ。三十八度の熱を、きみ、たのむ、あざむけ。プウシュキンは三十六で死んでも、オネエギンをのこした。不能の文字なし、とナポレオンの歯ぎしり。
HUMAN LOST (新字新仮名) / 太宰治(著)
公田げて自ら蒼生そうせいを害す
緑衣人伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
小春の日光はおそらくこれほどうららかには国土蒼生そうせいを照らさないであろう。軍縮国防で十に対する六か七かが大問題であったのに、地震国防は事実上ゼロである。
時事雑感 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
かみは、かしこきあたりから、しもは、われわれ蒼生そうせいにいたるまでの、心あるものは、いかに、どれほど、幕閣にひとりの、幕臣ならぬ、純正な日本の臣たる黄門光圀公こうもんみつくにこうという……
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天下蒼生そうせいの安危ということよりも大切なのであろうか? というのは、今の泄冶がもし眼前の乱倫に顰蹙ひんしゅくして身を退いたとすれば、なるほど彼の一身はそれで良いかも知れぬが
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
黄巾こうきん、諸州に蜂起してより、年々の害、鬼畜の毒、惨として蒼生そうせい青田せいでんなし。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さん候。この国、黄賊の大軍に攻蝕こうしょくせらるること久しく、太守の軍、連年に疲敗ひはいし給い、各地の民倉は、挙げて賊の毒手にまかせ、百姓蒼生そうせいみな国主の無力と、賊の暴状にかぬはなしと承る」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蒼生そうせい
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)