蒼生さうせい)” の例文
諸君よ、諸君は彼等の口の余りに大なるを以て無数の蛙群あぐんなりと誤るなかれ。彼等はすなはち口をあいて茫然自失せる十五億の蒼生さうせいにてある也。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
頃者このごろ年穀ねんこく豊かならず、疫癘やくらいしきりに至り、慙懼ざんくこもごも集りて、ひとりらうしておのれを罪す。これを以て広く蒼生さうせいためあまね景福けいふくを求む。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
不公平なる天譴を信ずるは天譴を信ぜざるにかざるべし。いな、天の蒼生さうせいに、——当世に行はるる言葉を使へば、自然の我我人間に冷淡なることを知らざるべからず。
かくの如くにして世界の主、蒼生さうせいの君と云ふべきなり。其見そのけん小にして、一体一物の理を知らざるは、猶全身して疾痛※痒あやうを覚えざるごとし。百世身を終るまで開悟することあたはず。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
原稿料の為に書いてゐない如く、天下の蒼生さうせいの為にも書いてゐません。