落飾らくしょく)” の例文
ご悲嘆のあまり後宇多は落飾らくしょく(出家)されたほどである。またまったく、これいらいは老いこまれた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すでに落飾らくしょく境涯きょうがいにあるというほど一変した京都の方の様子も深く心にかかりながら、半蔵は妻籠本陣に一晩泊まったあとで、また連れと一緒に街道を踏んで行った。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
(前略)そうして、この建暦けんりゃく元年には、ようやく十二歳になられ、その時の別当定暁僧都じょうぎょうそうずさまの御室に於いて落飾らくしょくなされて、その法名を公暁くぎょうと定められたのでございます。
鉄面皮 (新字新仮名) / 太宰治(著)
およそこの種の人は遁世とんせい出家しゅっけして死者の菩提ぼだいとむらうの例もあれども、今の世間の風潮にて出家しゅっけ落飾らくしょく不似合ふにあいとならば、ただその身を社会の暗処あんしょかくしてその生活を質素しっそにし
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それは北条時代からこの御維新前まで続いて来たのであって、自然この寺には沢山の女が庇護ひごされてもいたし、またその女の望みによっては末寺の坊に落飾らくしょくして住まっていた女も沢山あった。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
○同五月三日、鷹司、近衛、三条三大臣の落飾らくしょく
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
京都にある鷹司たかつかさ近衛このえ、三条の三公は落飾らくしょくを迫られ、その他の公卿くげたちの関東反対の嫌疑けんぎのかかったものは皆謹慎を命ぜられた。老女と言われる身で、囚人として江戸に護送されたものもある。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)