萩餅はぎ)” の例文
自分のうちはお萩餅はぎどころでなかつた。それでも平七が忙しい中で、亥の子藁を拵へて呉れたので、自分はそれを持つて門の外へ出た。
父の婚礼 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
お彼岸にお萩餅はぎこしらえたって、自分の女房かみさんかたきのように云う人だもの。ねえ、そうだろう。めの字、何か甘いものがすきなんだろう。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼女はお寺の墓地で、竹の棒をもって男童おとこわらべたちと遊びくらした。お彼岸の蒔絵まきえの重箱の中にはお寺さんへもってゆくお萩餅はぎが沢山はいっている。
そこにしげ子が「昼間こしらえたのですから、まずくなりましたけれど……」とお萩餅はぎを運んで、茶をさして来た。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「当り前さ、夏のお萩餅はぎか何ぞじゃあるまいし……ありようを言うとね、娘もまだ年は行ってても全小姐からねんねえなんだから、親ももう少し先へなってからの方が望みなんかも知れないのさ」
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
「ご褒美ほうびをあげよう。爺や、わたしのつくったお萩餅はぎをおあがり……爺や」
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
村の家々ではお萩餅はぎを拵へ、子供たちは亥の子藁といつて、細い棒をシンに藁をつかねて繩でキリ/\と堅く卷いたもので、ポン/\と音させつゝ地べたを打つて
父の婚礼 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)