にっ)” の例文
お滝の手が此方向きに寝ている男の肩に往ったところで、男は不意にひらりと起きてにっと笑った後にむこうの方へ往った。
狐の手帳 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
海晏寺の前のえのきの傍で擦れちがい、八幡祠の諍闘けんかの際に見た女にそっくりであった。女は広巳と眼をあわすなりにっとした。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
一昨日おとといの夕方、板女のような姝な女が、某家の前を通って往くので、見ていると、その女がり返って、にっと笑った」
女賊記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「いいことはありませんよ、苦しいのです、それに叔父さんは、お疲れよ」にっとしてそらしている広巳の眼を追っかけて
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
憲一は今窓から顔を出した人だろうかとおもって、それに注意したところで、女の姝な顔がこっちをむいてにっとした。
藤の瓔珞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「おのれ妖怪」と、云いさま平太郎は刀を抜いて起ちあがると、武士はにっと笑って背後うしろの壁の方へ退いたが、其のまま姿は浸み入るように壁の中へ消えた。
魔王物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
にっと笑いながら早速隻手かたてを突きだして、小供の胸のあたりに平手をやり、一と突きに突こうとしたが、小供は動かないで、そのはずみで己が背後うしろへよろける。
村の怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
驚いて声を立てようとしたが、舌がこわばって口がけない。と、女はぱっちりと眼を見開いてにっと笑った。
切支丹転び (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
と、女はちらとりかえった。そして、所天おっとの顔を見てにっとしたが、そのまままた見えなくなった。
海嘯のあと (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
乙姫様おとひめさまの前に出たような気になって、穴の開く程その顔を見詰めていたよ、すると女子おなごは俺に気がいたように、俺の顔を見てにっと笑ったが、笑う拍子に赤い下唇が動いて
宇賀長者物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
もうこれで妖怪も出ないだろうと思って眼をつむろうとすると、蚊帳の傍の掛竿にかけてあった帷子の袖の中が、きらりと光って一つの生首が顔を出して、新八郎を見てにっと笑った。
魔王物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
(とても今夜は帰らないだろう)と、独言を云い云い寝床の方へ往こうとして立ちあがると、背後うしろから袖を引く者があった。驚いて揮り返って見ると、前夜の女がにっと笑って坐っていた。
魔王物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
生きておる時のようににっと笑っておるではないか、拙者は殺した者が笑うはずはない、これは気の迷いじゃと思うて、きっと心を沈めて見直したが、それでもやっぱり女子の顔は笑うておる
人面瘡物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
と、云ってにっと笑ったが、そのまま室の外へ出て往った。太郎左衛門の手から刀が落ちた。太郎左衛門はあっけにとられてそれを見送っていたが、ふと気がいたので壮い女の方へ眼をやった。
切支丹転び (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
小女こむすめにっと笑った顔を向けただけで何も云わなかった。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
少女はにっとして出て往った。憲一はまた考えた。
藤の瓔珞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
壮い女の顔は太郎左衛門を見てにっと笑った。
切支丹転び (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
小女こむすめにっと笑って見返ったが
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
すると少女がにっとした。
藤の瓔珞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
娘はにっとして鷹を見た。
南北の東海道四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
少女の一人はにっとした。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
小女こむすめにっと笑った。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
政平はにっとした。
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)