茶汲女ちゃくみおんな)” の例文
それは当時、両国の水茶屋の茶汲女ちゃくみおんなの中でも、番付に載る人気者で、ガラッ八の八五郎も、一時は夢中になって、毎日通った相手だったのです。
お道さんが手拭を畳んでちょっと帯に挟んだ、茶汲女ちゃくみおんなという姿で、湯呑を片手に、半身で立ってわっしの方をましたがね。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さびに馬上の身を旅合羽たびがっぱにくるませたる旅人たびびとあとよりは、同じやうなるかさかむりし数人の旅人相前後しつつ茶汲女ちゃくみおんなたたずみたる水茶屋みずちゃやの前を歩み行けり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「お濠ばたの石置場で、このあいだまで、茶汲女ちゃくみおんなをしていた娘を、おのれは、何処へ連れて行った。——いいや、空惚呆そらとぼけてもだめだ。なんじが隠したに相違ない」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遥かに遥かに卑しく無智なものと思われた水茶屋の茶汲女ちゃくみおんなに、三十一文字の歌の作りようを教えて居たということは、想像も及ばぬ不思議な事件だったのです。
茶汲女ちゃくみおんなをしていた頃の男——浜田なにがしという牢人に、見つけ出されるおそれがあるからである。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
涼しくば木の芽峠、音に聞こえた中の河内かわちか、(ひさしはずれに山見る眉)峰の茶店ちゃや茶汲女ちゃくみおんな赤前垂あかまえだれというのが事実なら、疱瘡ほうそうの神の建場たてばでも差支えん。湯の尾峠を越そうとも思います。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
水茶屋の茶汲女ちゃくみおんなで年を喰って、酔っ払いも武家も、御用聞も博奕打ばくちうちも、物の数とも思わぬ面魂つらだましいです。
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
そこの一軒に、人目をひく茶汲女ちゃくみおんながあった。飲みたくもない茶をのみにはいったり、喰べたくもない心太ところてんすすったりしにゆく連中のなかに、先刻さっきの浜田某という侍の顔もよく見えていた。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「大変と言ったところで、茶汲女ちゃくみおんなを張るような人間じゃ大した代物しろものじゃあるめえ」