茂吉もきち)” の例文
「聞違えすることかよ、茂吉もきちさ。現に今日、父さんが二百両という金を持って帰っただ、あれが姉さの身代金だと云うだ」
暗がりの乙松 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
僕は恐る恐るその上を渡つて行つたが、そこへ猛風が何ともいへぬ音をさせて吹いて来た。僕は転倒しかけた。うしろから歩いて来た父は、茂吉もきちへ。べたつと匍へ。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
この年もまた卒業生の決口はけくちすこぶる多かった。保の如きも第一に『三重みえ日報』の主筆に擬せられて、これを辞した。これは藤田茂吉もきちに三重県庁が金を出していることを聞いたからである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
いわんや老少不常にして、先年すで小幡仁三郎おばたじんざぶろう、藤野善蔵ぜんぞう蘆野あしの巻蔵、村尾真一、小谷忍おたにしのぶ、馬場辰猪たつい等の諸氏をうしない、又近年に至りては藤田茂吉もきち、藤本寿吉じゅきち、和田義郎よしろう、小泉信吉のぶきち、野本貞次郎さだじろう
女たちの中におふさというのがいた、茂吉もきちという男の妻でいちばん年若く、そのとき二十三四だった。
蛮人 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)