艶気つやけ)” の例文
旧字:艷氣
二本の指を口へいれて、苦しそうに酒を嘔吐もどしている。いつも、顔へ顔が映ると笑われている彼の頬も、艶気つやけがなく、真っさおであった。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
或時は、もう寡婦で艶気つやけのない、頭髪かみのけの薄い、神経質な女だと思った。私は、女のことを考えているうちに、日が暮れた。
抜髪 (新字新仮名) / 小川未明(著)
今は色気も艶気つやけもなき病人が寐床の上の懺悔ざんげ物語として昔ののろけもまた一興であらう。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
うしろには綿わたの厚い、ふっくりした、竪縞たてじまのちゃんちゃんを着た、鬱金木綿うこんもめんの裏が見えて襟脚えりあしが雪のよう、艶気つやけのない、赤熊しゃぐまのような、ばさばさした、余るほどあるのを天神てんじんって
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その艶気つやけのある勇肌いさみはだがトンと国貞あたりの錦絵にしきえにありそうであった。眉山の容貌、風采、及び生活は洋画は勿論院派の日本画にもならないので、五渡亭ごとてい国貞あたりの錦絵から抜け出したようだった。
村は、色気も艶気つやけもなくなってしまった。
浮動する地価 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
だめだだめだ若い奴らは、五年もこの山にむとカサカサになって寒巌枯骨かんがんここつのていたらくだ、陶土つちあぶら艶気つやけもなくなってくる。そんな野郎は茶人相手の柿右衛門かきえもんの所へ行ッちまえ。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
艶気つやけのない青葉あおばをつけているにすぎませんでした。
親木と若木 (新字新仮名) / 小川未明(著)