舳櫓ともろ)” の例文
舳櫓ともろを押せる船子ふなこあわてず、さわがず、舞上まいあげ、舞下まいさぐなみの呼吸をはかりて、浮きつ沈みつ、秘術を尽してぎたりしが、また一時ひときり暴増あれまさる風の下に、みあぐるばかりの高浪たかなみ立ちて
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
舳櫓ともろ船子ふなこは海上鎮護ちんごの神の御声みこえに気をふるい、やにわにをば立直して、曳々えいえい声をげてしければ、船は難無なんな風波ふうはしのぎて、今は我物なり、大権現だいごんげん冥護みょうごはあるぞ、と船子ふなこはたちまち力を得て
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)