ろう)” の例文
それはこの場末ばすえの町にある一軒のカフェの女だった。カフェの女とは云いながら、カフェとは似合わぬ姫君のようにろうたけた少女だった。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
白いかたわれ月はろうたけて黄にあかって来る。ほのかに白い白帝城を、私の小さい分身の子供が、立ってとまって仰いでいる。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
その正次の眼の前に、——だから正次の背後横に、髪は垂髪、衣裳は緋綸子、白に菊水の模様を染めた、裲襠うちかけを羽織った二十一二の、ろうたけた美女が端坐していた。
弓道中祖伝 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
洋風の高雅な化粧で、全く純白に装われた関子の花嫁姿は、世にも美しくろうたけたものでした。
悪魔の顔 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「居てよ、二階に。」(おいでなさいな。)を色で云って、ろうたく生垣から、二階を振仰ぐ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
照りわたるきらびのはえろうたさを「とき」に示せよ。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
おお、そうして、白いろうたけた昼のかたわれ月が、おお、ちょうどその白い兜の八幡座はちまんざにある。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
もうそばへ来そうなものと、閑耕教頭が再び、じろりと見ると、お妙は身動きもしないで、じっと立って、ろうたけた眉が、雲の生際に浮いて見えるように俯向うつむいているから、威勢にじて
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これはまた、美しくもろうたき女で、巣鴨中に響いた容貌きりょうでした。
見ればろうたけた娘ごを、貴殿には誘拐なされようとしている。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
なほろうたくもありながら
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
痛々しく伏せた眉、ろうたけくかすむのも不思議な魅力でした。
そのかみのろうたき風情ふぜい
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
下賤げせんで育ったにしては、妙にろうたけた賢い女です。