能役者のうやくしゃ)” の例文
そのまま能役者のうやくしゃが用いたとて相応ふさわしいでありましょう。こういうものを誰も不断に用いるとは有難いことではありませんか。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
その中でも散楽さるがくすなわち能役者のうやくしゃの如きは、室町時代から解放せられて、立派な身分となっているのであります。
八橋の男に宝生栄之丞ほうしょうえいのじょうという能役者のうやくしゃあがりの浪人者があった。両親ふたおやに死に別れてから自堕落じだらくに身を持ち崩して、家の芸では世間に立っていられないようになった。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
大久保石見守長安おおくぼいわみのかみながやすは、家康の腹心ふくしんで、能役者のうやくしゃの子から金座奉行きんざぶぎょう立身りっしんした男、ひじょうに才智さいちにたけ算盤そろばんにたっしている。家康はその石見守を甲府の代官とした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……じつは先ほどから、明石の検校どのにぜひお会いしたいと、年のころ六十路むそじがらみの法師と、さよう、親子とおぼしき能役者のうやくしゃていの者が三名、あちらでお待ちしておるのですが」
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)