背向そがい)” の例文
面をおおうあり、背向そがいになるあり、あるいはこうべるるあり、予のごとき、われを忘れて、ほとんど心臓まで寒くなりぬ。
外科室 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「糸に合うなら踊ります。あのな、私のはな、お能の舞の真似なんです。」と、言いも果てず、お千の膝に顔を隠して、小父者おじごと捻平に背向そがいになった初々しさ。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夫人 (ひとしくともに)む。(と肩をかわし、身をひねって背向そがいになる、舞台におもてを返す時、口に一条ひとすじの征矢、手にまた一条の矢を取る。下より射たるを受けたるなり)
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
梓もたまらず、背向そがいになった。二人の茫然ぼんやりした薄い姿は、くだんの秋草の中へ入って、風もないのに動いたと見ると、一人は畳へ、一人は壁へ、座敷の影が別れたのである。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と肩を引いて、身を斜め、ねじり切りそうにそでを合わせて、女房は背向そがいになンぬ。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、敷居の内へ……片手づきに、納戸へ背向そがいおもてを背けた。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)