肥立ひだ)” の例文
おなつは肥立ひだちがよく、二十日めには起きて洗濯もし、帳つけや台所の手伝いなども、以前より元気にてきぱきやり始めた。
契りきぬ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「何のふが悪い、不義の子じゃあるまいし」と声をあららげるのもはげましの気持から出る言葉であった。そうした中でいねはしだいに肥立ひだっていった。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
お銀は時々そう言って、思うように肥立ひだって来ない自分の体を不思議がったが、やはりずるずるになりがちであった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
元来丈夫な身体だから、肥立ひだちかけると早かった。但し物を食いたがって困った。或日のこと
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
産後の肥立ひだちの悪い妻はまだ産室にいた。妻は児を産室から離さなかった。嬰児あかごの声は耳につきやすい、まして十八歳で父となった彼には、初めて聞く骨肉の声でもあった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朝よ夜よ肥立ひだちましまし我等が皇子あてにをさなくますとふはや
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
こんなに苦しい境遇にあっても山吹は不思議に肥立ひだって行った。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ふさの肥立ひだちは好調で、乳も余るほど出たし、その翌年の三月、ゆかは麻疹はしかにかかったが、それも無事に済んだ。
その木戸を通って (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
段々肥立ひだって来た、売色くろうとあがりの細君の傍で、お島は持って行った花を花瓶かびんしたり、薄くなった頭髪あたまくしを入れて、つくねてやったりして、半日も話相手になっていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その後温泉へ往って来て、悉皆肥立ひだっていた。もうソロ/\商売を始めることになっていた。
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
朝よ夜よ肥立ひだちましまし我等が皇子あてにをさなくますとふはや
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しかし肥立ひだちは予定通りにはかどった。その次に渋谷の兄さんが訪れた時は床の上に起き直って
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
しかしもう肥立ひだちになっていたから、野口君はお礼廻りのついでに見舞ってくれた。
首切り問答 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)