)” の例文
外面うはべだけは可なり鄭重に、直也を引いた。直也は、その口を一文字にきしめたまゝ、黙々として一言も発しなかつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
彼らの顔は、一様に、彼らの美しき不弥の女を守り得る力を、彼女に示さんとする努力のためにしまっていた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
血は、まだあつかつた。謀叛むほんする奴隷のやうな氣持ちが、私を尚も力強くき締めてゐた。
併し鮫島は慌てて顔をき締めねばならなかつた。梶子の顔に表はれた幽かな紅潮が、地獄の赤を見るやうな、激しい怖れを彼に与へた。彼は瞳を散大させて、前言を追駈けながら叫んだ。
(新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
そういう必死な心情が、漸く周りの空気をき締めて行った。多可子は甘えたセンチメンタルと思った感情の底に、またこうした根もあることを知って、政枝を今更ながらいじらしく思った。
勝ずば (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
外面うわべだけは可なり鄭重ていちょうに、直也を引いた。直也は、その口を一文字にきしめたまゝ、黙々として一言も発しなかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
かよわい瑠璃子の顔は、真蒼まっさおだった。身体はかすかにふるえていたけれども、わるびれた所は少しもなかった。その美しい眉宇びうは、きっと、きしまって、許すまじき色が、アリ/\と動いた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)