綿貫わたぬき)” の例文
「ねえ、綿貫わたぬき君。われわれは、もっと語ろうではないか。素敵すてきなブランデーをのませる家を知っているから、これからそこへ案内しよう」
熱海あたみ予審判事、警視庁の戸山第一捜索課長以下鑑識課員、大森署より司法主任綿貫わたぬき警部補以下警察医等十数名現場げんじょうに出張し取調とりしらべを行ったが
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それから、天井と鎧の綿貫わたぬきとを結んでいる二条の麻紐を切り、死体を鎧から取り外しに掛ると、続いて異様なものが現われた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
すると、彼女は早速電話で、店と以前取引関係のあつた綿貫わたぬきといふ男を呼び寄せ、夫の面前でこんな風に啖呵たんかを切つた。
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
その夫婦もん怪しいとにらんで勾引こういんしたんやそうですが、その時枕もとの乱れかごに入れてあった光子さんと綿貫わたぬきの着物着て、そのまま警察い連れて行かれた。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
綿貫わたぬき博士はかせがそばで皮肉を言わないだけがまだしも、先生がいると問答がことさらにこみ入る。
号外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「かぶと、よろいの綿貫わたぬき、どこにても、味方は味方とすぐわかる目じるしを付けよ」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
数日後、速水はやみ荘吉、あるいは綿貫わたぬき清二、あるいは鮎沢あゆさわ賢一郎、あるいは殿村啓介けいすけ、あるいは宮野緑郎、あるいは佐川春泥しゅんでい、その他無数の名を持つ影男は、帝国ホテルの一室におさまっていた。
影男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
検事の名前は鶴木つるきといって五十恰好の温厚そうな童顔禿頭とくとうの紳士、予審判事は綿貫わたぬきという眼の鋭い、痩せた長身の四十男で、一見したところ
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「サアその先を……」と綿貫わたぬきという背の低い、真黒の頬髭ほおひげはやしている紳士が言った。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
たしかにそういう虚栄心から、夫に対する私の愛を自分の方い奪いなさることに興味持ってなさったのんでしょうが、それにしたかって、光子さん自身の心は綿貫わたぬきの方へ吸い取られてたことは
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「本当か、綿貫わたぬき君。氏は、日本人にしては色が黒すぎるではないか」