紺木綿こんもめん)” の例文
紺木綿こんもめんののれんに白く「弥六」と染め抜いてあった。そしてまた老人のほうへ向き直った彼は、この土地の者かときいた。
滝口 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その江戸を去る時、紺木綿こんもめんの切れの編みまぜてある二足の草鞋わらじをわざわざ餞別せんべつとして彼に贈ってくれたのもこの夫婦だ。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
彼等の仕事は、カッパざるを担ぐことと博奕をすることぐらいのもので、給金はたいてい二貫四百、一年中のお仕着せが紺木綿こんもめんあわせ一枚と紺単衣こんひとえ一枚。
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
帯は黒い毛繻子けじゆすのくけ帯をかひくちに結んで居ました。紺木綿こんもめんの前掛をして居ました。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
草餅の重の風呂敷ふろしき紺木綿こんもめん
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
と言いながら、岸本は山国の農夫の着ける紺木綿こんもめんのカルサンを着けたまま、自分で茶を入れに火鉢ひばちの側へ立って行った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)