素破すば)” の例文
一方では真実の役者がそれぞれ立派に三座にっていたが、西両国という眼抜きの地に村右衛門が立籠たてこもったので素破すばらしい大入おおいりです。
江戸か東京か (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
今までは形容詞ばかりで聞いていた正木博士の頭脳のホントウの素破すばらしさが、こうした何でもない諧謔かいぎゃくの中からマザマザと輝やき現われるのを感じた一刹那せつな
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
団十郎はその年春興行の折病にかかり一時は危篤の噂さへありしほどなればこの度菊五郎との顔合大芝居かおあわせおおしばいといふにぞ景気はふたを明けぬ中より素破すばらしきものなりけり。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
おれは昔バルザツクが、一晩に素破すばらしい短篇を一つ、書き上げる所を見た事がある。あいつは頭に血があがると、脚湯きやくたうをしては又書くのだ。あのすさまじい精力を思へば、貴様なぞは死人も同様だぞ。
売文問答 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あの夢現ゆめうつつのまどろみの中に現われるのだ——あの素破すばらしい弾々だんだんたる肉体、夢の様な瞳、はなびらのような愛らしいくちびる、むちむちとした円い体の線は、くびれたような四肢を持って僕にせまって来るのだ
蝕眠譜 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
「天狗」はその才能、通力なぞいうものに対する極度の誇りを、その素破すばらしく高い鼻に依って表明しております。そうして鼻以外の処は眼を怒らし歯を噛みしめ顎鬚を翻して
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そのころ世の中は欧洲おうしゅう戦争のおかげで素破すばらしい景気であった。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
芳夫は早速数万円を投じて素破すばらしい邸宅を建てた。
夫人探索 (新字新仮名) / 夢野久作(著)