紛紜いざこざ)” の例文
植源の忙しい働き仕事や、絶え間のないそこのうちのなかの紛紜いざこざに飽はてて来たお島は、息をぬきに家へやって来ると父親にこぼした。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その次に矢張り十三年度の三四月を区切って急にえて来たのは、取引上の紛紜いざこざ、喧嘩の後始末、夫婦喧嘩の尻拭いなぞである。
狂主人公に扮した尾上おのえ菊五郎との間に、何か言葉のゆきちがいから面白くないことが出来て、菊五郎の芝居は見るの見ぬのとの紛紜いざこざがあった。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
恐らく國のうちにゐるんだが、何か御一門に紛紜いざこざがあつてか、それとも隣りあひの強國、たとへば佛蘭西か何處かが怖くて餘儀なく姿を隱してゐるのに違ひない。
狂人日記 (旧字旧仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
「旦那、お言葉中でございますが、あっしは町方の御用聞で、御武家やお大名方の紛紜いざこざに立ち入るわけには参りません。承る前に、それはお断り申上げた方が宜しいようで——」
自分ひとりの気分をかばつて一日でいいさうした周囲に起る不快なくだらない紛紜いざこざに耳をかさず心を動かさずに私は寂しい私自身を抱いて静かに深くそして真面目に何かを考へて見たい。
日記より (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
後に紛紜いざこざが起きて困ったことがあったが、結局解決がつかずじまいであったことが、今朝の清澄な心にふと思い出された。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「旦那、お言葉中でございますが、あつしは町方の御用聞で、御武家や御大名方の紛紜いざこざに立ち入るわけには參りません。承はる前に、それはお斷り申上げた方が宜しいやうで——」
紛紜いざこざの絶えなかった一頃の事情は、お島もこの頃姉の口などから洩聞もれきいたが、その鶴さんにも、いつか何処かで逢う機会があるような気がしていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「御武家方の紛紜いざこざに立入るのは筋違いですが、ともかく一応承りましょう」
ステンカラの粗末な洋服を着ており、昔し国定と対峙たいじして、利根川とねがわからこっちを繩張なわばりにしていた大前田の下ッでもあったらしく、請負工事の紛紜いざこざで血生臭い喧嘩けんかに連累し
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「御武家方の紛紜いざこざに立ち入るのは筋違ひですが、兎も角一應うけたまはりませう」
其の家の地理や隣り近所の有様や、又は小さい子供を多勢もつた親達の夫婦喧嘩をして、瀬戸物や何かを打壊す時の紛紜いざこざを、六つにしてはまめ/\しすぎるほど細かに話して
チビの魂 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
倅の金五郎の家出の原因というのは、少し遊びすぎただけの事で、大した問題ではありませんが、それより吾妻屋にとって鬱陶うっとうしい問題は、ツイ地続きの隣に住んでいる、田島屋との紛紜いざこざでした。
ひところの家庭の紛紜いざこざで心の痛手を負った時、彼女のところへやって来ると、別に甘い言葉で慰めることはしなくても、普通商売人の習性である、ふところのなかを探るようなこともなく
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
伜の金五郎の家出の原因といふのは、少し遊び過ぎただけの事で、大した問題ではありませんが、それより吾妻屋に取つて欝陶うつたうしい問題は、ツイ地續きの隣に住んでゐる、田島屋との紛紜いざこざでした。
その日も養父は、使い道の分明はっきりしないような金のことについて、昼頃からおとらとの間に紛紜いざこざ惹起ひきおこしていた。長いあいだ不問に附して来た、青柳への貸のことが、ふとその時彼の口から言出された。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
それまでにも、お増とお今との間には時々の紛紜いざこざが絶えなかった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)