紙店かみや)” の例文
えゝ浅草の三筋町——俗に桟町さんまちという所に、御維新ごいっしん前まで甲州屋と申す紙店かみやがござりました。主人あるじは先年みまかりまして、お杉という後家が家督あとを踏まえてる。
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
学校と露路をあいにして、これも元禄げんろく年間に建った表町通りの紙店かみやの荷蔵がある。その裏の何かを取りはらって空地が出来た時、どんなに児童たちはよろこんだかしれない。
机にむかつて、復た私は鉛筆の尖端さきを削り始めた。今度の長物語を書くには、私は本町ほんまち紙店かみやで幅広な方のけいの入つた洋紙を買つて来て、堅い鉛筆でそれに記しつけることにして居る。
突貫 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「毎日」が先月紙店かみやの払ひが出来なかつたので、今日から其日々々に一聯宛買ふさうだとか、職工が一日ついたちになつても給料を払はれぬので、活字函ケース転覆ひつくらかへして家へ帰つたさうだとか云ふ噂が
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)