紅麻こうあさ)” の例文
そのうちに、浴衣の模様が、蝶々のようにかすれて見えたは細君で、しかも坐って、紅麻こうあさもすそを寄せ、端近う坐っていた。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二小間ふたこま青蒼まっさおに蚊帳が漏れて、すそ紅麻こうあさまで下へ透いてて、立つと胸まで出そうだから、のぞくどころじゃありません。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
紅麻こうあさの絹の影がして、しろがね色紙しきし山神さんじんのお花畑を描いたような、そのままそこをねやにしたら、月の光が畳の目、寝姿に白露の刺繍ぬいとりが出来そうで、障子をこっちで閉めてからも
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蚊帳は式台向きの二隅ふたすみと、障子と、ふすまと、両方の鴨居かもいの中途に釣手を掛けて、十畳敷のその三分の一ぐらいを——大庄屋の夜の調度——浅緑を垂れ、紅麻こうあさすそ長くいて、縁側のかたに枕を並べた。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)