糸立いとだて)” の例文
あわてて、糸立いとだてを肩にひろげたが、とおるようなビショぬれで、ポッケットにはさんだ紫鉛筆の色が、上衣の乳の下あたりまでにじみだした。
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
あとにをんな亭主ていしゆかへつてたならばませようと思つて買つて置いた酒をお客にましてしまつたのですから、買つて置かうと糸立いとだていて手拭てぬぐひかむ
其時、私は糸立いとだてを着て、草鞋わらぢを穿いて歩いて行つた。浜島から長島までの辛い長い山路、其処には桃の花の咲いてゐるはたもあれば、椿の花の緑葉みどりはの中に紅くむらがつてゐる漁村もあつた。
春雨にぬれた旅 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
とりいれられている趣であるが、玄関には登山用の糸立いとだて菅笠すげがさ、金剛杖など散らばっている上に、一段高く奥まったところに甲冑かっちゅうが飾ってあり、曾我の討入にでも用いそうな芝居の小道具然たる刺叉さすまた
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)