立還たちかへ)” の例文
三年前神隱しに逢つて野州二荒山ふたらやまの奧に居たといふ和泉守一子鐵三郎が江戸に立還たちかへり、改めて家督相續を願ひ出で、後見人永井平馬は
一寸ちよつとお待ち下さい、少し心当りがありますから。」と言ひ捨てゝ室を去つた。暫時しばらくして立還たちかへ
空知川の岸辺 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
如此かくのごとやから出入でいりせしむる鴫沢の家は、つひに不慮のわざはひを招くに至らんも知るべからざるを、と彼は心中にはかおそれを生じて、さては彼の恨深くことばれざるをさいはひに、今日こんにち一先ひとまづ立還たちかへりて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「八犬伝」一篇を縮めて、馬琴の作意に立還たちかへらば、彼はこの大著作を二本の角の上に置けり。其一はシバルリイと儒道との混合躰にして、他の一は彼の確信より成れる因果の理法なり。
娘のお萬が非業に死んで、その打撃の重大さに押しのめされながら、それでも大家の支配人としての責任に目覺めて、辛くも事務的な心持に立還たちかへつたと言つた世にも痛々しい姿です。