へつゝひ)” の例文
いつでも庭に立つて庭のへつゝひにかゝつてゐる釜の處へ往來してお給仕をするのが女中のお常の役目である。お常の差支へる時は令孃が代る。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
賽錢箱は錢を入れる道具だ。覗いて見るとバラ錢が少し底の方にある。へつゝひや佛壇に金を隱すなら誰でも氣が付くが、賽錢箱までは思ひも寄らない
一に武士道、二に小猫の尻つ尾、三にへつゝひの油虫……すべて女の嫌ひなものは滅びてゆく世の中である。
臺所のへつゝひの下で燒いてしまつたさうでござります。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
三藏が歸る時分に庭のへつゝひの前に居たお常は戸の透きから見送つてそのションボリと淋し氣に歸つて行く三藏の後姿を哀れに思ふ。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
私のをつと玄策げんさくに取り入り、娘のお直をだまして養子に入り、夫玄策の死んだ後は、この朝井家のかぶから家から、へつゝひの下の灰までも自分のものにした上、三年經たないうちに
かういう神様の傑作も、へつゝひの前へ置きつ放しにしておくと、何時いつとなくすゝばんで来る。
庫裡くりの八疊の床の間には、濡れた千兩箱を三つ置いて、少し汚點しみになつた跡が今でも判りますが、押入にも、納戸にも、床下にも、天井裏にも、須彌壇しゆみだんの下にも、位牌堂ゐはいだうにも、へつゝひの下にも
へつゝひの中に、こんなものがありましたよ」
飛んでもねえ、へつゝひ横町の上總屋かずさやですよ。
へつゝひの中から飛出したやうだぜ」