空也くうや)” の例文
空也くうや念佛と云ふものがあるのは唯聞いてゐるばかりだけれど、此の講中の御詠歌の踊りはそれに似たものではないだらうか。
二月堂の夕 (旧字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
この年(天慶元年)の頃、京都には、僧の空也くうやという者があらわれて、辻に立ち、念仏をとなえ、念仏をすすめ、念仏即浄土の説教をし始めていた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
在俗の名は慶滋よししげ保胤やすたね、世に内記の上人と云ふのは、空也くうや上人の弟子の中にも、やん事ない高徳の沙門しやもんだつた。
六の宮の姫君 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
思わず手ぶりを真似まね間拍子まびょうしに乗って、しまいには我知らず人数に加わってゆくというような習性が空也くうや以前、「八幡種蒔はちまんたねまく」よりももっと昔から、すでにこの島国の住民たちの
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
で、芸術以外に宗教にも趣味を持って、殊にその内でも空也くうやは若い頃本山から吉阿弥の号をもらって、ひさごを叩いては「なアもうだ/\」を唱えていた位に帰依きえしていたのでありました。
我が宗教観 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
からさけ空也くうややせかんうち
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
その他、わが朝の先徳にも、空也くうや、源信、良忍、永観などみな、習いみがきたる智恵もぎょうもすてて皆、念仏の一行いちぎょうに、いて生れたる人々ではござらぬか。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
殊に恋愛を歌つたものを見れば、其角さへ木強漢ぼくきやうかんに見えぬことはない。いはんや後代の才人などは空也くうやの痩せか、乾鮭からざけか、或は腎気じんきを失つた若隠居かと疑はれる位である。
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)