祠堂金しどうきん)” の例文
いえいえ、祠堂金しどうきんを初め、お山詣での方々の懐中をかすめておりますことも、みな玄長様のお差しがねじゃとか言うてでござります
神社仏寺とも古来所伝の什物じゅうもつ、衆庶寄付の諸器物、並びに祠堂金しどうきん等はこれまで自儘じままに処分し来たったが、これも一々教部省へ具状すべき筋のものであるか。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「お言葉ですが、油断はなりません、相手は何分にも黒旋風で、何をやり出すかわからず、妙月庵には修復の祠堂金しどうきん千両が、明日請負の棟梁とうりょうに渡す筈で用意してあります」
小金吾問へば「檀那、お聞なすつて下さいまし、村の者から預つて来た、高野こうやへ納める祠堂金しどうきんの廿両、この袷の間へ入れて置いたのがございません、さあ大変だ、金がねえ」
祠堂金しどうきんも納めてある筈、僅ばかりでも折々の附け届も怠らなかったつもりだのに、是はまた如何な事! 何時いつ掃除した事やら、台石は一杯に青苔あおごけが蒸して石塔も白いかさぶたのような物におおわれ
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
作「三藏かえ、あれはねばアさまが死んだから其の白骨を本当の紀州の高野へ納めに往くって、祠堂金しどうきんも沢山持ってる様子だ、お累さんもあゝいう死様しにようをしたのも矢張やっぱりめえら二人でした様なものだぜ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それも祠堂金しどうきんばかり狙う女スリだっていうんですがね、三十位の大年増に化けたかと思うと、十七八のかわいらしい奴に化けたりするっていうんですがね。どうもさっきの娘が臭せえんです。
先祖の菩提寺なる春徳寺改築のために、祠堂金しどうきん三千両を寄進することになり、その日出入の鳶頭かしらが宰領で、人足にかつがせた吊台に、三つの千両箱を積み、阿波屋三郎兵衛夫婦が、娘お由利と共に
銭形平次捕物控:239 群盗 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「有難うございます。森右門の木村六弥は死んだ筈でございますが、倅の皆吉と養い娘のお島はまだ生きていることと存じます。丁度山谷の春徳寺で、三千両の祠堂金しどうきんが盗まれた折でもあり、とことんまで調べて見たら、何んか繋がりがあるかもわかりません」
銭形平次捕物控:239 群盗 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)