神文しんもん)” の例文
神文しんもんの表には、殉死とも、籠城とも、約束してなかった。ただ、進退一致だった。——内蔵助の料簡次第りょうけんしだいにと、したためてある。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、それを一同に読み聞かせた上、異議がなければ、ただちに神文しんもんへ血を注いでもらいたいと言いだされた。もちろん、誰一人として異議のあろうはずもなかった。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
御岳だぞといったのは、を見るなかれの神文しんもんちかいをふりまわして、卑怯ひきょうに相手をためらわそうとしたものである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何のむずかしいことでもございません。さっそく帰邸のうえ、沐浴もくよくして神文しんもんを相したため、明朝、鎌倉表出発のみぎり、自身、台下へささげ奉りましょう」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ほこをうごかすなかれ、をみるなかれの神文しんもんもとうていいまの人心にはまもられる気づかいがない。見ろ——
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
相互に神文しんもんを取交わすより、これを往来に建てることは、絶対な約束を天下へ公約することになる。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あれほどの大鷲おおわしが、一ぱつたまでおちてくるはずはない。さすれば、女はたにへふりおとされ、二ツの生命いのちきずつけることになる。これも、御岳みたけ三日みっか神文しんもんやくまもればこそ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ほ。左様なお下知を、どうしてお下しになりましたか。永禄の元年、互いに、爾後じご干戈かんかを交えまいと、神文しんもんを交わし、約定を取結んである御両家のあいだがらなるに」
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれど、その宿命も、四年前の永禄元年このかたはんでいた。将軍足利義輝のあつかいで和睦わぼくが成立したのである。相互、誓紙をかわし、神文しんもんに誓って、干戈かんかおさめたのだ。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今更、異心のあろう道理はなけれど、この際、更に神文しんもんのちかいを新たにいたして、一層、結束を固くすることは無意義であるまいと思われる。御異存がなければ、血判をいただき申したい
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)