祖母おばあさん)” の例文
姉は祖母おばあさんをかかえて、裏長屋に、間借りをして、そこで、何か内職をして露命をつないでいる。私が小僧になったのは、赤坂台町の葉茶屋だった。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ところが、祖母おばあさんは面白い凡人なのだ。この祖母、前にも言ったかも知れないが字を知らない。
「ヘエ、何処どこから其様そんなに人が参りますか」と篠田のいぶかるを、伯母は事も無げに首肯うなづきつ「私の知つとる程の人が、皆な寄つて来るよ、——お前の阿父おとつさんも来る、阿母おつかさんも来る、祖父おぢいさん祖母おばあさんも来なさる、 ...
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
……ところが、その後祖母おばあさんの亡くなった時と、妹が婚礼をした時ぐらいなもので、可懐なつかしい姉は、毎晩夢に見るばかり。……私には逢ってくれない。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この祖母おばあさん、江戸へ来て嫁入って、すぐ大火事にあって、救米のおむすびをもらった時、そばにいた者がお腹がすきすぎて、とうてい一個ひとつ握飯おむすびでは辛棒がなりかねるとなげくと
ト同じ燈籠とうろうを手にげて、とき色の長襦袢ながじゅばんの透いて見える、うすものすずしいなりで、母娘連おやこづれ、あなたの祖母おばあさんと二人連で、ここへ来なすったのが、ねえさんだ。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
だが、祖父おじいさん祖母おばあさんを信頼している。早く出してやれといったが——祖父は頭の上の、階下したから荷物をあげおろしするためにつくってあるの子に、階下の様子をのぞいている祖母の眼を感じた。