砂糖黍さとうきび)” の例文
写生の場所を変へるとき、あるひは帰るとき、彼らはこつそり砂糖黍さとうきびを折つて、その竹のやうに堅い茎をかじりながら、のどの渇きをいやした。
少年 (新字旧仮名) / 神西清(著)
金色の寝台の金具、家鴨あひるのぶつぶつした肌、切られた真赤な水慈姑みずくわい、青々と連った砂糖黍さとうきびの光沢、女のくつや両替屋の鉄窓。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
そのうちに砂糖黍さとうきび舶載はくさいして、暖地に移植してみたらと考えていますが、たばこと同様これも国内に拡まっていいものか悪いものか、考えさせられます
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちがった信仰をもつ為政者いせいしゃが、単なる殖産政策の立場から、すすさとして神山の樹をらせ、それを開墾して砂糖黍さとうきびなどをえさせ、鼠の居処をせばめて
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
しかつめらしく恋の密輸入物をトランクにしまうと一寝入りするつもりで車窓からボスニヤ平原に咲く砂糖黍さとうきびの花のにおいを嗅いでいるうちに、すっかり追想的になってしまったのだ。
孟買挿話 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
夜になると、炉端で清江が畑から切って来た砂糖黍さとうきびの茎を叩いている。この寒国でも今年から砂糖黍を植え始め、自家製の砂糖を作るのだが、それも今夜が初めてで炉端もために賑やかだ。
彼は砂糖黍さとうきびやぶのように積み上った街角から露路へ折れた。ロシア人の裸身はだか踊りの見世物が暗い建物の隙間で揺れていた。彼は死人の血色の記憶から逃れるために、切符を買うと部屋の隅へうずくまった。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)