相互たがい)” の例文
元園町もとぞのちょうでも相当の商売があって、わたしも度々たびたび買ったことがある。ところが、このおでん屋は私の父にうと相互たがいに挨拶する。
思い出草 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それはネ、どうせ些とは何とか言いますのサ。また何とか言ッたッて宜じゃア有りませんか、しお相互たがいに潔白なら。どうせ貴君、二千年来の習慣を
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
かしらに気が籠った様子で、相互たがいの話をめないのを、余りおそくなっては、また御家来しゅが、変にでも思うと不可いけませんから、とそれこそ、人に聞えたら変に思われそうな事を、早瀬が云って
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ほかの者も知らず知らず相互たがいの顔や頭に目を留めだした。
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
市郎は彼が家出ののちに生れたであるから、相互たがいに顔を見識みしろう筈はなかったが、其詞そのことばはしよって、重蔵は早くも彼が角川家のせがれであることを悟った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
が、これも相互たがいに顔を見識みしらなかったので、二十年ぶりで初めて邂逅めぐりあった現在の父と子が、ここたちまち敵となった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)