直書じきしょ)” の例文
「そうです。岩松経家つねいえ直書じきしょをもって、はるか四国の阿波からこれへ、ことばに絶する苦労をして、昨夜辿たどりついた者でござりまする」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御隠居が直書じきしょをもって仰せ出されるほどこの非常時の入費については心配しておらるる次第である、方今ほうこんの形勢は上下一致の力に待つのほかはない
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
さい大臣宛ての献上目録にさしそえて、べつにわしの直書じきしょ一封のうちに、そちの立身の途をも推薦しておく考えなのだ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
最初、長州征伐のことが起こった時、あれは半蔵が木曾下四宿の総代として江戸に出ていたころで、尾州藩では木曾谷中三十三か村の庄屋あてに御隠居の直書じきしょになる依頼状を送ってよこした。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と、まずひらくに先だって、ひたいに押しいただいた。織田右府信長の直書じきしょであることはいうまでもない。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
曹操は、すぐ使いを飛ばし関羽に直書じきしょを送って、すぐ戦場へ馳せつけよ、と伝えた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だれがさるめにこんなものをゆわいつけたのか? やア、こりゃいよいよもって不審ふしんばん浜松城はままつじょう使番つかいばん常用じょうようはこ、しかも紅房べにふさ掛紐かけひもであるところを見ると、ご主君しゅくん家康いえやすさまのお直書じきしょでなければならぬが
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)