目容まなざし)” の例文
其生々として樂し氣なる明き目容まなざしは思想生活の豐富なることを證明したり。口元に憂鬱なる陰影を見るは鋭敏なる感覺より來れるものなるべし。
佛蘭西人の観たる鴎外先生 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
春信が女はいづれも名残なごり惜しき昼の夢よりめしが如き目容まなざししてあるものははぎあらはにすそ敷き乱しつつ悄然しょうぜんとして障子にりて雨ななめに降る池の水草みずくさを眺めたる
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
勿論何の事かわかりはしないが、会話はわたくしに関することであつたらしいのは、西洋婦人のわたくしを見る目容まなざしと微笑と、母の態度とによつて推察せられた。
冬の夜がたり (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
むしろそれとなくわたくしの返事を促す為に遣われたもののようにも思われたので、わたくしは「そう……。」と答えかけた言葉さえ飲み込んでしまって、唯目容まなざしで応答をした。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ひらめ目容まなざしとわがかたにそゝがれて
其のやさしき目容まなざしは青空の如く澄み
偏奇館吟草 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)